プロパティマネジメント(PM)こそが本当の "オーナーズエージェント"

オーナーズエージェント大家さんの代理人の役割 藤澤 雅義

第1章 新しい実態「プロパティ・マネジメント」とは?  
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完全なオーナー様の代理人   「オーナー様の代理人」はどこにいる?  

  日本の不動産業界は、国際的にみると少々不自然な状態にあるといえます。というのは、不動産の運用について完全にオーナー様側の立場に立って考え、判断し、行動する役割の人がほとんど存在しないといえるからです。
  「そんなことはない。管理会社もあるし、仲介業者もオーナー様の代わりに動いているではないか」。こう反論されるかもしれませんが、実際は少し違うのです。たとえば別の著書で、私はこんな問いかけをしたことがあります。
  −−「不動産屋さん」の仲介で入居した人が、素性のよくわからない人でした。家賃は滞納するし、夜遅く帰ってきて騒音をまき散らす。注意してもききません。他の入居者様に文句は言われるし、ゴミの出し方も目茶苦茶なので近隣にも迷惑をかける。「不動産屋さん」に聞いていた連帯保証人の勤務先に電話しても、そんな人はいないという……。こんな「わけあり」の人を仲介した不動産屋さんは「悪い不動産屋さん」でしょうか。−−
  いいえ、決してそうとはいえません。なぜなら、お客様を紹介することが不動産屋さんの業であって、仲介以外の入居者様審査などは本来の仕事ではないからです。
  しかも入居者様からは、家賃1ヵ月分の仲介手数料を受け取るのが普通ですから、入居者様の立場に立って仕事をするのが不動産屋さんの本来の役割です。つまり部屋を探している人の代理人、エージェントであるわけです。部屋を借りるのが難しい「わけあり」の人に部屋を提供できたのですから、かえって「良い不動産屋さん」とさえ言えるのです。
  入居者様とオーナー様双方の利益に、同時に貢献することは事実上不可能です。また、民法(108条)で禁止されている「双方代理」に抵触すると言えるかもしれません。
  賃貸管理会社も、日本では独特の発達をしてきました。もともと仲介から出発して、その延長線上で管理も行うようになりましたから、入居者様からは仲介手数料が入りオーナー様からは管理料を得るという、双方からフィーをいただくのが当たり前になってしまっています。これでは、どちらの味方かわかりません。
  不動産売買の仲介も同様です。宅建業法では、仲介手数料を借り手から3%、売り手から3%いただいても合法であると定められていますが、よく考えると変な話です。売りたい人はより高く売りたいし、買いたい人はより安く買いたい。双方の利益が反するのに、それぞれから手数料を得ていているのでは、双方の利益を代理しているとしか思えません。やはり「双方代理」の禁止にあたるのではないかとの指摘が出ているのも、しごく当然といえるでしょう。
  このように、これまでの日本の不動産業界にはオーナー様の代理人つまり「オーナーズエージェント」は、事実上ほとんどいなかったといっても過言ではないのです。

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「オーナー様利益の最大化」をめざす

  では「オーナーズエージェント」とは、どのような存在をいうのでしょうか。
  たとえば当社では、以前からアパート・マンションの運用に関して、完全にオーナー様側の立場に立つことを明確にしてきました。オーナー様の資産を守り、高い運用益を提供することを業務の目的として、賃貸住宅の企画と運用管理を専門とする会社です。
  企画と建築プロデュースは得意分野ですが、建築そのものはしません。入居者様側に立たなければならない仲介業も一切やっておりません。仲介は不動産屋さんにお願いするスタイルです。たまにインターネットなどを通じて仲介の依頼もありますが、お客様を案内したり決めたりするのは不動産屋さんにやってもらいますし、不動産屋さんが入らない場合は、もちろん当社が仲介手数料をいただくことはしません。
  アメリカではこのような分業がはっりしていて、仲介はブローカー、運用管理はマネージメント、開発はディベロップメントと明確に区別され、それぞれ別業種の扱いで確立しています。日本のようにひとくくりで呼ばれる「不動産業」は存在しないと言っていいでしょう。
  日本でも、2000年に入ってから「プロパティ・マネジメント(PM)」という言葉が業界で急に脚光を浴びるようになりました。唐突ともいえる出現のしかたでしたから、耳慣れない方も多いでしょうが、不動産の証券化や日本版REITの解禁で、「どうやらアメリカではプロパティ・マネジメントが重要らしい」とマスコミが気付いたせいでもあります。PMによって運用益、収益が大きく変わるので、アメリカ人に言わせれば「不動産を買うことはプロパティ・マネジメントを買うことだ」というぐらい評価されている業務です。
  たまたま私は同じ発想で会社の業務を展開していましたから、「日本のプロパティ・マネージャーの草分け」などと評価してくださる方もいます。少々面映いのですが、いまは素直に受け止めるようにしています。
  プロパティ・マネージャーは直訳すれば不動産管理士になりますが、日本の賃貸管理とはずいぶん違い、完全なオーナーズエージェント、オーナー様の代理人役を務めます。まずオーナー様やクライアントの利益を最優先して考えますから、前述したようなブローカー業とマネジメント業を併用することはありません。報酬もマネジメントフィーあるいはコンサルタントフィーという形で、すべてオーナー様からいただきます。
  オーナー様から委託された物件を、資産運用の専門家としての立場から賃貸不動産として運用管理して、その不動産からもたらされる収益を最大化することがプロパティ・マネージャーの役割になります。

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「隠しごと」は厳禁

  オーナーズエージェントは、名実共に「オーナー様の代理人」ですから、オーナー様を裏切る行為があってはいけません。したがって、これまでの日本の不動産業界では考えられないような倫理観が要求されます。とりわけオーナー様の利益に反する「隠しごと」は厳禁です。つまり、オーナー様に隠れて儲けようとしてはいけないのです。
  たとえば、当社は建築プロデュースの仕事もしていますから、要求しなくても建築会社からバックマージンをもらえるだろうとよく言われます。それがこの業界の常識かもしれません。もちろん経営者ですから、欲しくないと言えば嘘になります。しかし、本来の業務を真に遂行するには、それをしてはいけないのです。バックをもらえば建築会社に対して、オーナー様のエージェントとして言わなければならないことを遠慮して言うようになるかもしれません。それは「利益相反」と言われるものです。
  当社の業務委託契約書には、建築会社からバックはもらわないと明記してあります。そのお陰で、「だから信用する」と言ってくださるオーナー様やクライアントがたくさんいらっしゃいます。
  このように、「倫理」「透明性」「公開性」「説明義務」「利益相反行為の禁止」などがプロパティ・マネジメントのキーワードになります。
  実際の業務として、「レポーティング能力」も重要です。預かった物件がどう活用され、どう収益を生み出しているかを報告できなければなりません。しかもそれを口頭でいうだけではなく書面にして残します。過去3年のトラックレコード(運用履歴)を出してといわれて、出せる不動産屋さんがどれだけいるでしょうか。

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利益相反とは?  −−五つの具体例

最も重要なキーワードである「利益相反行為の禁止」について、少し詳しく説明してみましょう。「利益相反行為」とは何か。たとえば冒頭であげた「わけあり」の入居者様のように、オーナー様との利害衝突が発生した場合、オーナー様の利益に反する行為をいいます。
  次のような具体例があげられます。

1. 入居者様募集を自社直営店でしかしない
2. 入居者様の審査を甘くする(自社手数料の取得に重きを置く)
3. 業者との癒着
4. 双方代理(両者から手数料)
5. 入居者様に商品を売りつける
6. 情報の公開の限度を逸脱する
7. ケイレツの扱い

  1については、あとで詳しく触れます。 2の「入居審査を甘くする」は、先ほどの不動産屋さんの例のようにしばしばトラブルを引き起こす問題です。
  部屋探しをしている1人の人は、平均7件をみるというデータがあります。7件案内してようやく申し込みをいただく。1日で決まることはめったにありません。「やっと手数料が入るぞ」というところまでこぎつけたが、ちょと普通の人ではなさそうなので与信をかけたらブラックリストにのっている。こんな場合に、オーナー様から報酬をもらっていれば、ブラックであることをわかっていて入居させるのは利益相反になります。
  「業者との癒着」もよくある話です。修繕やリフォームの際に、見積もりコストに上乗せさせてバックマージンを得るなどは、よくあることです。「双方代理」は基本的に矛盾する行為でしょう。「入居者様に商品を売りつける」行為も、しばしばみうけられます。契約時に強制的に商品を買わせてばかりいると、あの物件に入居すると余分なお金がかかるよ、という評判がたってしまって募集に支障をきたすようではまずいですよね。「情報の公開」も、限度をよくわきまえることが必要です。オーナー様の利益に反する逸脱した公開はいけません。
  「ケイレツの扱い」も大切です。たとえば、建築会社のほとんどは系列の管理会社を有しています。自社で建てた物件は系列会社に管理させたいと考えるのは、これまでのビジネス感覚では当然と思われるかもしれませんが、もしかしたら他の管理会社のほうがその物件には適しているかもしれません。ここでも、あくまでオーナー様の利益を考えて判断すべきなのです。少なくとも、他社より良い管理をし、そしてフィーが高くないという状況をつくらなくてはいけないでしょう。

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自社の利益を優先しない

  「入居者様募集を自社直営店でしかしない」については、私が経験したわかりやすい例をご紹介しましょう。
  東京の下町、JRの駅に近いある物件がほぼ1年間、2部屋ずっと空きっぱなしでした。2DKのファミリータイプです。オーナー様から銀行に泣きが入り、その紹介で私にお鉢が回ってきました。オーナー様がすごくいい人で、滞納はあるし空室は空いたままなのに不動産屋さんに文句を言えなかったようです。
  空室には5つの理由がある、と私は分析しています。

1) 設定家賃の問題
2) 入居者様募集の仕方
3) 物件の運用管理
4) 間取りの問題
5) 設備・仕様の問題

  この5点をしっかりクリアすれば、間違いなく決まります。当社がかかわりはじめたころには3戸目の空室も出ましたが、きちんと手を打ったところ1ヵ月半で3戸全部決まりした。当社にしてみればごく普通で、それほど大したことではないのですが、オーナー様はびっくりしてしまいました。何が違っていたのでしょうか。
  実は、2)の「入居者様募集の仕方」で、利益相反を起こしていたのです。それまで募集していたのは地元では比較的有力な管理会社で、支店も3店ありました。管理料も5%で、オーナー様は決まるごとに業務委託料をを1ヵ月支払うという、ごく一般的な条件での管理契約です。ところがその管理会社は、空室の情報を他の不動産屋さんに出していなかったのです。自社の3店舗だけで直接決めようとしていました。
  たしかに直接扱いだと、入居者様からも手数料がいただけますからもう1ヵ月分儲かります。業界では「ダブテ」とか「両手」とか言いますが、手数料がダブルで入るわけです。たとえば10万のところが20万になれば、おいしい商売ですから、たとえ1年間決まらなくても最終的にうちで決まればいいと考えたのかもしれません。家賃が入らなくてオーナー様がいくら泣こうが、うちが儲かればいい−−この利益相反は一番やってはいけないことなのです。
  そこまでの悪意はなくても、自社で管理している物件、特に新築は募集効率がいいですから、すべて自分で扱いたいと考えるのは当然です。10万円の家賃なら20戸すべて自社で入れれば200万円入りますから、全部取りたいと誰しも思うでしょう。でも、業界のメディアにあまねく広告を出して、他の不動産屋さんにも情報を出せば、「もっと早く」、「高い家賃で」、「いい入居者様」がついた可能性は否定できません。
  自社の直営店にくるお客様は限られています。東京都内を例にあげれば、宅建業者は2万社あります。すべて賃貸をやっているとは限りませんが、情報を出さなければ可能性を排除してしまうことなり、オーナー様の利益より自社の利益を優先してしまうことになります。
  結果的にこの物件は、地元の管理会社を解約して当社の管理になりました。

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